神鏡を磨く

サビいっすなあ。冬ですからねぇ。
しかし、長野はいつも通り寒いけど雪は少ない。
北陸は大変な目にあってるとのこと。
みなさまご苦労様です。くれぐれも雪かきで腰痛めないようにね。
そうそう、金沢では雪かきのこと「雪すかし」って言います。
フェイスブックで繋がってる金沢の友人たちの投稿に「雪すかし」の言葉が
一斉に載るのを見て懐かしい気持ちになりました。

「角居さん、八咫の鏡(ヤタノカガミ)磨いてくんねぇかい。」
そう言われたのは今年の地区の新年会。
びっくりしました。
八咫の鏡とは神社の奥、真ん中に鎮座する丸い御神体の鏡
実際には三種の神器の中の鏡の固有名詞でもあるので
一般名称で「神鏡」と呼ぶことにします。
そもそも神鏡なるものに触れることすら想像に及ばないくらい
僕の中では尊い存在でした。
昨年同じ神社、僕の住んでいるエリアの鎮守、田面稲荷神社(たづらいなりじんじゃ)
の鈴が破損してしまい、それの修復をさせていただいたので
それを見込んでのことだったと思います。

実際に受け取った神鏡は直径約一尺、厚さ1センチほど、
綺麗な真円の白銅製でした。白銅でしたら扱ったことがあります。
裏にはこの鏡を奉納した方の名前と奉納日が彫られています。
昭和6年に奉納。
戦前、戦中、戦後と激動の時代を見つめ、
大事に扱われてきたのであろう御神体を手に触れる。
なんとも不思議な感触がしました。
表面が酸化してざらつき、白く変色しておりましたが
腐食は深くはなさそうです。
神鏡研磨前 

まずは酸洗。
硫酸に浸し、頃合いを見て重曹で下研磨、
ざらつきがなくなり少し光沢が出てきました。
神鏡研磨途中 

後はひたすら面を壊さないよう、バフにて研磨していきます。
完全に曇りが取れるまで全体に7〜8回も研磨したでしょうか。
不思議なもので研磨していくと前の仕事、作った時の仕事が見えてきます。

磨き始める時、僕は一つルールを決めました。
それは「放射状に研磨すること」
鏡を御神体にするとは
「敬虔で清らかな気持ちで己を見つめなおす」という意味もありますが
太陽を神格化した「天照大神」を御神体とするという大前提があります。
お社の中に収める神札、神宮大麻にも「天照皇大神宮」の文字がありますよね。
太陽の化身である以上、光は中心から外に向かって放射されるはず。
ただ周りを映す鏡ではなく放射状に光が発散されるべきだと思いがあり、
中心から放射状に磨いていきました。
ただ、この磨き方をすると真ん中を強く研磨する可能性があるため、
面が壊れないかという心配があり、注意深く見ながら作業を進めなくてはいけません。
ありがたいことに僕の研磨による面の波打ちは免れたのですが
変な方向にわずかな揺れがあるのです。
鏡面に近づくほど写り込みが顕著になりますのでよくわかります。
その揺れはどうも製作時におけるやすりをかけた方向の波打ちのように思うのです。
先人の仕事が垣間見える、昭和6年の職人が心を込めて制作した仕事の一端が覗ける
とても貴重な経験でした。

今日、僕に研磨を頼んでくれた方にお戻しし、「さすがだねえ」
とのお褒めの言葉をいただいて参りました。
約2週間ほども御神体不在にしてしまい大変申し訳ないことではありましたが
近いうちにまた田面稲荷神社にご神鏡が戻り、今まで以上に
僕らの心のうちを映してくれるのではないかと思います。

神鏡研磨後 
真ん中上部に写り込んでいるのは道祖神をかたどった松本の道神面。
アマテラスをかたどった神鏡に道祖神が写るなんてすごい物語になりそう。。
作業のための経過写真なので写真の質はかんべん!

僕の作品に「依代(よりしろ)」というタイトルのものがあります。
もちろん僕が作りますので金属製です。
本来、木をよりしろとする神籬(ひもろぎ)と
石をよりしろとする磐座(いわくら)の二つがあり、
そのほかはありえないと思っておりました。
しかし今回この仕事をするにあたり、一番僕らが目にする御神体、依り代が
金属製であるということを気づかせていただくありがたい経験でした。
何か背中を押していただける、そんな機会になったと思っています。



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角居康宏

Author:角居康宏
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モノを作ることによって
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僕が、たくさんの作品に
心動かされたように、
僕の作ったもので
誰かの力になれたら。

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